「愛の結晶」が二人の愛を壊すなんて・・・
「愛の結晶」という言葉があります。
愛し合う男女の間に生まれた赤ちゃんを指してよくこう言われます。
しかしながら皮肉なことに、「産後クライシス」は二人がその「愛の結晶」を授かったがために、夫婦の愛が冷めてしまう現象です。
こんな理不尽で悲しいことがあるでしょうか?!
それだけに、これから赤ちゃんを授かるカップルにとっても、すでに赤ちゃんを授かっているカップルにとっても、「産後クライシス」はぜひとも避けたいものです。
この記事では、女性を対象に、産後クライシスの回避法・対策法を4つにまとめました。
いわば、「産後クライシス」の妻向け対策編です。
妻向け対策法 ① 「爆発」はやめて落ち着いて言葉にして伝えよう!
クライシスが起こる典型的なケースは、夫が育児家事を妻任せにしている言動をしたとき起こります。
たとえば、あなたが授乳で疲労困憊しているときに夫が帰宅したシーンを想像してみてください。
夫は玄関のドアを開けるなり、「おなかすいているんだけど、何かない?」と言ったとします。
あなたならどのように行動しますか(してきましたか)?
ムッとした顔をしてドアをバタンと乱暴に閉めて出ていく、あるいは台所の流しにたまっていたお皿をわざとガチャガチャいわせて洗う。
「私こんなに疲れてるんだから、そのくらい自分でやってよ」の『察してよ!』アピール(非言語的メッセージ)です。
しかし、この種の間接的アピールはかなりの確率でスルーされます。
「ちぇ、なんだよ。機嫌悪いな~」と夫を不愉快にするだけです。
この際、妻が知っておくべきことは、自分の心身の状態を「言葉で伝えなければ夫は理解できない」ということです。
最悪なのは、「察してくれない」不満が積もり積もって、いきなり爆発しちゃうこと。
妻の変化を理解していない夫にとっては、いきなりの爆発は“青天の霹靂”。
筆者も子育て真最中の頃、疲れやストレスがたまってくると、この手のヒステリー をよく起こしました。
しかし、まったく効果はありませんでした(笑)。
不満がたまっていればいるほど感情的になってしまい、伝えたいことが夫に伝わりません。
ですからこの手の「爆発」は逆効果、夫婦の溝を深めるだけです。
冷静に落ち着いて不満を伝えると、別に夫に悪意はなく本当に気づいていないだけのことも多々ありました。
「あ、そんなに大変なんだ」と代案を出してくれたり自分で動いてくれることも結構ありました。
「もっと早く言ってくれればよかったのに」とも言われたこともあります。
「言ってくれないとわからないよ」、確かにそのとおりなのです。
妻向け対策法 ② 夫の家事育児に「ダメ出し」はNG !
あなたが今の自分の状態、してほしいことをしっかり言葉で伝えたことで、「よしわかった、オレができることはするようにする!」と逞しく約束してくれたとします。
ここで気をつけなければならないのが、夫の家事育児への「ダメ出し」です。
「○○がダメ」「○○はこうしないとダメ」と妻がやり直す、あるいはやり直しを命じる。
そんな「妻の姑化現象」は厳禁です。
こういった状況では、夫は間違いなくやる気を失います
夫がいったんやる気を見せたら、それを決して削がないことが大切です 。
最初のうちは、完璧を求めない。夫の家事がどんなに下手でも、目をつぶりましょう。
むしろ大事なのは頑張ったことを「褒めること」「感謝の気持ちを伝えること」です。
そのためにも、「とりあえず5~6割できればOK」くらいから始めてはいかがでしょうか。
妻向け対策 ③ 「長男くん」に「父親」になってもらおう!
ママたちが雑談するときのテッパンネタに「長男くん」トークというものがあります。
これは出産後、子どもの世話でいっぱいいっぱいなときに、夫が相も変わらず食べっぱなし、脱ぎっぱなし、使いっぱなし。
さらには「俺もお世話して欲しい~」オーラを出したり「構ってくれない」とすねたりすることなど、夫が“もう一人の大きな子ども”=「長男くん」にしか見えなくなることを面白いおかしくこきおろすというものです。
いまここに至っては、そんな長男くんは妻のイライラの元。
でも、そうした「長男くん」は、これまで甲斐がいしく世話を焼く「良き妻」として母親変わりを務めてきたあなたが育て上げたのかもしれません。
夫に「俺は世話を焼かれて当然なんだ」という意識をもたせていませんか?
この際、父親になったのです。父親の自覚をしっかりもってもらいましょう。
「赤ちゃんを育てるのってものすごく手間暇かかるの。だから父親であるあなたがいっしょに子育てしてくれないとこの子をちゃんと育てられないのよ」そうやさしく説得して「お父さん」になってもらいましょう。
妻向け対策法 ④ 時には「実力行使」も!
口でいっても、結局、行動を変えない男に対しては、ショック療法が必要かもしれません。
ファザーリング・ジャパンの安藤さんがお勧め(?)しているのが、数時間の「プチ家出」、
夫に半強制的に赤ちゃんと二人きりになる体験をしてもらうのです。
実は、筆者もこの手をよく使いました。
双子の男の子と3歳上の長女、幼子3人が狭い家で元気いっぱい遊んでいる時の状況たるやもはや戦場の如し。
土日夫が居る日になると、「ちょっと買い物に行ってくるのでお願い!」と言い残して出かけては、ついでに1時間ほどコーヒーショップで油を売ったり、本屋で立ち読みしたり・・・。
少しリフレッシュして帰宅する私を迎える夫の顔といったら・・・、「もうなんもいえね~」といった感じのへロヘロ顔で恨めしげに「ずいぶん遅かったね~」と一言。
いくら「大変」と力説しても伝わらないものが、たった2時間で実感してもらえます。
絶大の効果を発揮すること請け合いです。
ぜひ一度お試しあれ(ただし、くれぐれも赤ちゃんに負担のない範囲で慎重に計画的に)!
【参考文献】
内田明香・坪井健人 2013 産後クライシス ポプラ新書
<編集者のコメント>
具体的な方策が、面白おかしく書かれていますね。
書いてあることはどれも当たり前の、特別技術がいることではないけれど、だからこそ難しい!そして、渦中にいる本人は当たり前の方法に気づけない。
そんな中、客観的に、しかも子育て経験者からの具体的アドバイスは、とても価値あるものとなるのではないでしょうか。
こちらとしては、“ことば”にはしていないけど、伝えてるつもりになってるんですよね。
人間不思議なもので、ことばにして伝え理解を得られなかったときに比べ、行動から察してもらおうと思った結果理解が得られなったときの方が怒りのエネルギーが爆発的に大きくなる。
「あなたは私の気持ちを察することもできないのね!」と、なぜか相手のパーソナリティー批判にまで至ってしまう。
夫婦ならではの、強い怒りがこみあげてしいますよね。
そんなとき「伝えないと分からないよね」と、 一呼吸おけるよう私自身も気を付けようと思いました。