子育てがこんなに大変だなんて・・・
「子育てがこんなに大変だなんて知らなかった」
「誰も教えてくれなかった」
最初の子どもが産まれて、子育てをスタートした新米ママがたいてい口にする言葉です。
実際には先輩ママたちは言っているんです。
「生まれたら大変よ~」って。
「子育て=女の幸せ」の方程式は人々の間で少なからず共有されています。
新米ママたちも、小さい頃からメディアや周りのおとなによってそう刷り込まれています。
ですから、先輩ママたちから「決して子育てはそんな甘いもんじゃないのよ。心して臨みなさいね!」とアドバイスされても、子育ては“しあわせ”に決まっている、完璧スルー。
まったく聞く耳もたずだったのです。
もちろん、新米ママたちも、子どもはかわいい、子育ては楽しい、育児は大切だと思ってはいるのです。
このような子どもと育児への肯定的な感情は、とりわけ母親に強くみられます。
やっぱり子どもを産んで女性は違う、と思われるゆえんです。
「母親・父親失格」の思いはほとんどの親が経験
しかし矛盾するようですが、母親には子どもへや育児への消極的・否定的感情もまた強いのです。もちろん、父親以上。
筆者の友人のひとりは、「この子がいなくなったらラクになれる」。
そんな思いにとりつかれ、ハッと気がついたら7か月の長女(第1子)をマンション5階のベランダから落とそうとしていた、と明かしてくれました。
今は3人の子どもをもつ、面倒見のいい元気いっぱいの優しい女性です。
また、知人のひとりも、あわや殺人未遂(?)のツライ思い出を語ってくれました。
長女(第1子)がとにかく四六時中泣く子で、やまない泣き声を聞いていたら気におかしくなりそうで、泣き声を聞こえなくするため布団を何重にもかぶせたとのこと。
その時もし赤ちゃんが窒息死していたら、こんな善良な夫婦が幼児殺しの容疑者になっていたのかと思うと子育ての闇をのぞき見た気がしてゾッとしました。
幼児・児童虐待も増加の一途
でも実はこのような経験は例外的な親の話ではありません。
よく聞くと、多かれ少なかれほとんどの親たちが似たような経験しています。
赤ちゃんが泣きやまない、子どもが言うことを聞かない、といって狂ったように殴る蹴るの暴行を加える親もいます。
法務省が公表した犯罪白書で幼児・児童虐待の検挙数によれば、2016年の検挙数は、過去最多。
統計を取り始めた1999年以降、ずっと増え続け、検挙人数は99年の6倍にも上っています。
この数字だけみても、子育ての現場がいかに深刻な事態に陥っているかがわかります。
子育てに夢をもちスタートしたはずが・・・
「子どもを自分の手で育てたい」と言って仕事を辞めたのに、「一日中、子どもとだけいる生活が耐えられない」「育児だけの生活で息が詰まりそう」「このままだと世の中から取り残れていくようだ」といって、子どもを預けて働きに出る母親も少なくありません。
また、疲れ切った状態で子育てをしていると子どもを可愛いと思えなくなります。
そうなると、自分は母親に向いていないのではないだろうか、子どもを産んだ自分が間違いだったのではないか?
そんな自信喪失に陥る母親もいます。
実は筆者自身がそうでした。
あらゆる否定的な感情を経験しました。
子どもをたたく、子どもに暴力を振るう、そこはさすがにギリギリ自制しました。
しかし、虐待をする親の気持ちもわかると思いました。
3人の子どもを育てましたが、特に最初の子ども(長女)のときはひどかった。
最初の子育てで無我夢中だったというのもありますが、今思うと娘は、difficult child(育てにくい子)でした。しかし、当時はそんな知識はありませんでしたし、アドバイスしてくれる人もいませんでした。
もし、そのとき子どもには「気質」の違いがあることを知っていて、娘の「気質」に合わせた子育てをしていれば、あそこまで苦しまずに済んでいたという思いがあります(詳しくは、コチラ「育児に苦戦していませんか?:もしかしたらDifficult child?」>
「子育てが楽しめない」自分。
「子どもが可愛いいと思えない」自分。
「母親失格」以前に、人間として終わっているとまで思い詰めました。
まわりで難なく子育てをこなし、育児を楽しんでいる(ように見えた・思えた)ママ友達をみると言い知れぬ劣等感に苛まれました。
今、このようなサイトを開設しているのも、その経験があまりに悲惨なものだったからです。先輩ママのひとりとして、家事育児などの家族内ケアの研究者として、楽しくも苦しい子育てを少しでもラクで楽しいものしていくお手伝いができたらいいなと思ってのことです。
子育てが大変と感じている方は、<コチラ<今どきママは「母親失格」?:社会の変化が心も変えた>やコチラ<「母性神話」の呪縛:育児を楽しめない日本の母親たち>ご覧ください。
【参考文献】
柏木恵子 1995 親の発達心理学:今、よい親とはなにか 岩波書店